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タイ・プーケット島在住。タイならではの出来事や日々の体験、個人的な思い出などを書きとめています。


by phuketbreakpoint
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説得?説明?すべて無駄

「どうしたんですか、その腕は?」
半袖シャツから覗かせた両腕を傷だらけにして、長期滞在者の澤野さん(仮名75歳)が、うちに現れました。
「いや、ちょっとね・・・。猫にやられたんだ・・・・・」
「猫に?それにしても、大きな猫だったんですねえ。両腕とも、ボロボロじゃないですか」
一昨年の9月、キリスト協会で知り合ったタイ人女性と電撃結婚した澤野さんは、年齢を感じさせないエネルギッシュな行動で、いつも私を感心させていますが、話を聞けば、その前日、奥様と、お金の問題で大揉めになってしまったそうで、興奮して言い争っているうちに、哀れ澤野さんの両腕は、見るも無残な姿に変わり果ててしまったようです。
なんとか、よりを戻すことに成功した澤野さんでしたが、すぐに、また、新たな危機の火種が浮かび上がってきました。

“家族・親戚問題”
これも、タイ人と結婚した、外国人の多くが苦しむ問題ですが、家族の絆、親戚たちとの繋がりを大切にするタイでは、個人主義が横行する先進諸国から来た外国人には、理解に苦しむことが多々あります。
私自身の経験からも、はっきりと言えますが、夫婦喧嘩の原因となる金銭トラブルには、配偶者の親類・縁者が絡んでいる場合が非常に多いと感じます。
「ちょっと、お金貸してちょうだい。すぐに返すから」
これが、まったくの嘘っぱちであるのは、まだしも、返済期限がとっくに過ぎた後、遠慮がちに、こちらの方から、
「そろそろ、あの金を返してくれないか」
そんなことを言おうものなら、自分自身はもちろんのこと、通訳を務めるであろう、タイ人の奥さんや、旦那さんまで、
「もう、あんたたちとは、これっきりにしよう」
そう言い渡されてしまいます。タイ人の親戚付き合いでは、借金の取立てはタブーのようですね。

しかも、本当に、「これっきり」になってくれれば、いいのですが、何年か経って、ほとぼりが冷めると、ひょっこり顔を出して、愛想のいい笑顔を振りまきながら、
たったの10万バーツ(約30万円)でいいから、貸してちょうだい。それ以上は必要ないから。たったの10万バーツよ。
銀行から借りる?それじゃあ、利息払わないとダメでしょ」
無利子、無期限で、お金を持っていってしまおうという、虫の良い話をするために、わざわざ長距離バスに乗って、プーケットまで来ちゃうわけですね。もちろん、アポ無しなんですが(アポとるときに理由を聞かれ、その時点でアウトになることを避けたいのでしょう)、こちらがアッサリ断ると、
「トム(注、ラントムのこと)の亭主は、チャイラーイ(性格悪い)だ。わざわざ、プーケットまで、行ったのに・・・」
親戚中に、悪口を言われてしまいす。
そういう評判がたつことは、同じようなことを考えている人に対しての、抑止力にもなりますから、歓迎すべきことなんですが、こういう人に限って、また何年かすると、同じお願いで、プーケットに現れ、
「たったの20万バーツでいいから、貸してちょうだい。それ以上は必要ないから。たったの20万バーツよ」
物価の上昇分も、しっかり上乗せされているわけです。

「澤野さん、こういうことはですねえ、説明しても無駄だと思いますよ。
説得?それも無駄ですね。だいたい、タイの女性は、理論立てて説明しようと思っても、最後まで、話を聞いてくれませんもの」
私も、結婚した当初は、ちょっとしたことで意見の相違があった場合、日本的に、1で状況を、2で原因・理由を、3で結論を、喋ろうと思っていたら、最初に例え話に出した、「女」という単語で、もう彼女は引っかかっちゃって、
「なに!あなたには、女がいるのか。やっぱり、そうか!許せないわ!」
「いや、そうじゃあなくて、これは例え話で、分りやすく説明するために・・・・・」
「その女、どこにいるのよ。行きたかったら、とっとと、出ていきなさいよ」
「いや、ちがうんだって・・・。オレが言いたいのは、そういうことじゃなくて、つまりだなあ・・・・・」
「あっ!昨日の午後、外出したのは、その女の所なんだわ!」
「だから、これは、たとえ話だっつーの・・・・」
まるっきり、埒があきません。
“言いたいことは、なるべく手短に、簡潔に、単純に!”
とりあえず結論を、バーンと先にもってきて、もしも相手が聞いてくれそうな雰囲気だったら、その後に改めて補足説明をもってくる。
タイで女性と付き合っている人は、この点に注意しましょう。

15年間のタイ生活の中で、私が学んだ結論としては、「説得」も、「説明」も、通用しないタイの女性には、「お願い」という手段の方が、遥かに効果的なように思います。相手の立場を、十分尊重した上で、
「オレのために、何とかしてちょうだい」
こんな態度なら、彼女も、無碍には断れないでしょう。
しかし、ここで注意しなくてはいけないのは、相手の返事を、けっして額面どおりに受け取ってはいけないということです。タイ人は、何かをお願いされた場合、「無理」とか、「できない」というセリフは、言いたくないようですね。その場の雰囲気を壊したくないのか、断って自分が悪者になるのが嫌なのか、必ず、
「うん、わかった」
そう言ってくるはずです。タイ人同士なら、言い回しや、表情の変化などで、なんとなく、腹の裏が読めるようですが、外国人は、相手の話をそのまま受け取って、後で大騒ぎになってしまうこともありますから、注意が必要です。

大きな流れに身を任せつつ、ときどき思い出したように、
「ところで例の・・・、あの話なんだけどさあ・・・、あれ、やっぱり、無理かなあ・・・・。そうかあ・・・、やっぱり、無理か・・・」
さりげなくオールを動かしていると、忘れた頃になって、向こう岸に流れ着いていることもあるんです。
by phuketbreakpoint | 2008-11-16 12:47