タイ・プーケット島在住。タイならではの出来事や日々の体験、個人的な思い出などを書きとめています。


by phuketbreakpoint
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ローイクラトング これは戦争だ!

11月24日。
今日はタイの灯篭流し、ローイクラトングです。
バナナの木の幹を輪切りにし、花で飾って、色とりどりの灯篭を作るのが、伝統的なスタイルでしたが、最近は、気球式の紙風船が人気を集め、とって代わるようになってきました。タイの新しい名物ともいえるでしょう。

「パパ、あれ買って」
きよみが、さっそく、おねだりしました。ふわふわと舞い上がり、夜空を流れていく、無数の灯りを眺めていると、きよみに催促されなくとも、「ちょっと試しに、買ってみるか」という気になってきます。
「仕方ないなあ・・・・。じゃあ、一つだけだぞ」
私は、売り子のお兄ちゃんに、100バーツ札を渡しました。
以前なら、買った人が失敗しないように、売り子が責任を持って、最後まで見届けてくれたのですが、最近は、人気急上昇で、お客が多いせいか、そこまで、いちいち面倒見ていられないようです。

「よし、なおこは、そっちを持ってくれ」
直径70~80センチの円筒形の紙風船を、二人で向かい合うように持ち上げ、底に付けられた点火部分の炎から発生する二酸化炭素で満たせば、気球のように上がっていく仕掛けなんですが、やってみると、なかなか難しく、どうにもうまくいきません。手を放した途端、紙風船は、横滑りを始めるように、海の方向に流れていきます。

「あー、パパ、ダメだ・・・」
なおこが、慌てて駆け寄って、なんとか無事にキャッチしましたが、海に落ちて、濡れてしまえば、100バーツが一瞬にしてパーになってしまいます。こんなことを、2度、3度と繰り返した後、ようやく紙風船は、空に向かって上がっていきました。
「やったー!成功だー!」
子どもたちも、大喜びです。
「やれやれ、これで今年の厄も、落とすことができるだろう。来年も、西岡家は、幸せがいっぱいだ」
そう思った瞬間でした。

ピュー、プシューン、プシューン、プシューン、プシューン、ピュー・・・・。
突然、真っ赤な火の玉が、線を引くように束となって、私たち家族の幸せを満載した紙風船目がけて飛んでいきます。
「何だ、これは!?」
よく見ると、無数の花火の一斉射撃が、不安定な飛行を続ける紙風船に向かって、襲い掛かっていました。
「バカ、やめろーっ、当たっちゃうじゃないか!」
プシューン、プシューン、プシューン、プシューン、ピュー、ピュー・・・・。
連発式ロケットランチャーのような激しい花火攻撃に、西岡家の紙風船は、風前の灯火です。

「いかん、ダメだーああ!」
とうとう、何発かの直撃弾を受けて、穴が開いてしまったようで、紙風船は、次第に浮力を失い、海面に向かって、力なく落ちていきました。
ヨロ、ヨロ、ヨロ・・・、フラーリ、フラリ・・・、ヨロ、ヨロ、ヨロ、ヨロ・・・・・・ポチャリ。
「あーあ、落っこっちゃったー」
100バーツも注ぎ込んで、何度も失敗した後に、やっとのことで打ち上げた紙風船でしたが、たったの30秒で、海の藻屑と消えてしまいました。私も、ラントムも、子どもたちも、みんなガッカリです。

ところが、そんな私たちの横、約10メールのところで、ビール片手に集団を形成していた白人のおっさんたちが、
「オー、ガット・イッ(やったぞ)!」
「グー(いいぞ)!」
拳を、力いっぱい頭上に上げて、大歓声を上げていました。
「おのれえ!なんちゅうことを、してくれるんじゃい(怒)!」
ガックリきているところに、この光景ですから、私は、おっさんグループを睨みつけましたが、彼らは、なんら怯むことなく、「ヒュー、ヒュー」と奇声を上げて、大喜びしたままです。

「落っこっちゃったわねえ。残念だけど、仕方ないわ。帰りましょう」
ラントムが、そう言うと、すかさず、きよみが、
「えー!?帰っちゃうの?もう一個、買ってー!」
と再び、おねだりです。
「何を言ってるの。一つだけっていう約束でしょ」
ラントムがそう言っても、きよみは、聞き入れません。私に向かって、しきりと、物欲しげな視線を送ってきました。

納得がいかなかったのは、やはり、私も同じでした。ついつい、一緒になって、
「そうだ、きよみの言うとおりだ。このままじゃあ、悔しくて、眠れん。もう一個買おう」
大喜びの子どもたちの横で、私は、近くにいた売り子に、また声をかけました。
「ちょっと、兄ちゃん、もう一個、くれや」
私は、100バーツ札を、もう一枚渡し、再び紙風船を手にしました。
「よーし、今度こそ・・・」

フワ、フワ、フワ、フワ・・・・・、風船は飛行し始めましたが、今回も、前回と同様、あまり力強さが感じられません。
それを待ってました、とばかり、おっさんたちの花火が、また襲い掛かってきました。しかも、今回は、その斜め後方にいたタイ人のグループまで合流してきたようで、前回以上の猛烈な火の粉が、一斉に紙風船に向かって飛んでいきます。
ピュー、ピュー、ピュー、ピュー・・・・、プシューン、プシューン、プシューン、プシューン・・・・。

「あっ!まただー、危なーい!」
一発命中、
ピュー、ピュー、ピュー、ピュー・・・・、プシューン、プシューン、プシューン、プシューン・・・・。
「逃げろー!早く、上に上がるんだー!」
もう一発命中。
ピュー、ピュー、ピュー、ピュー・・・・・、プシューン、プシューン、プシューン、プシューン・・・・。
「いかん、ふらついている・・・」
さらに、もう一発命中。
ピュー、ピュー、ピュー、ピュー・・・・・、プシューン、プシューン、プシューン、プシューン・・・・。
「・・・・完全に、バランスを崩している・・・・」
駄目押しで、もう一発命中。
「・・・・・・・・・・」

ヨロ、ヨロ、ヨロ、ヨロ、ヨロ、ヨロ、ヨロ、ヨロ、ヒュー・・・・・・、ポチャリ。
またしても、撃墜されていまいました。大歓声を上げる、連合軍。
「うぬぬぬ・・・・・、おのれ、くそファラン(白人)。それに、あの連中(タイ人グループ)も、裏切りやがって、この非国民がー!」
目の前で、二度までも落とされると、こちらも、意地になってきます。
「おい、兄ちゃん、もう一個だ!」
再び、タイムリーに近づいてきた、売り子のお兄ちゃんを捕まえて、私は、また追加オーダーです。きっと、カモだと思って、近くで様子を見ていたのでしょう。

「パパ、もうやめなさいって。ここじゃあ、無理よ。あっちに行って、飛ばせば、誰からも邪魔されないでしょ」
「そうは、いくかい。このまま、黙って引き下がるわけにはいかん。西岡家は、敵に断じて、後ろは見せん!」
大山空手のようなセリフを吐きながらも、私は、
「兄ちゃん、もっと耐久力があって、勢いよく、上がるヤツは、ないかなあ」
「じゃあ、これがいいよ。ほら、触ってみて。厚みが違うでしょう。本当は150バーツなんだけど、アンタは可愛そうだから、特別に、120バーツにしてあげるよ」
怪しげな説明でしたが、
「本当に、大丈夫なのか?」
と、私が念を押すと、
「ええ、絶対に大丈夫です」
という返事が返ってきました(この大嘘つき!)。

夜空を見上げると、無数の紙風船が、パトンビーチ上空を漂っています。あの仲間入りをするまでは、何が何でも、やめられません。私は、なおこと協力して、紙風船を、高々と頭上にかざしました。
すると、それを見ていた売り子のお兄ちゃんが(今回は無事に上がるまで、見届けてくれるようです)、すかさず、アドバイスしてくれます。
「ピー(兄貴)、そんなに高く持っちゃあ、ダメだよ。風が吹き込んで、上手くいかないよ」
お兄ちゃんの指導に従って、今度は地面に擦れるほど、低く紙風船を押さえ、私と、なおこは、ガスが充満してくるのを待ちました。1分ほど我慢すると、紙風船は、パンパンに膨れ上がり、いかにも、パワフルな姿に変わっていきました。

「よーし、今度こそ、大丈夫だ。みんな、覚悟しやがれー! 風船爆弾、発射準備ーっ、ファイヤー!!!」
私は、溜まりに溜まった怒りを吐き出すように、紙風船を離しました。満を持して、解き放たれた紙風船は、勢いよく、舞い上がっていきます。
ここで再び、連合軍の猛烈な対空砲火が、一斉に火を吹きました。
ピュー、ピュー、ピュー、ピュー、ピュー、ピュー、ピュー、ピュー、ピュー・・・・・。
プシューン、プシューン、プシューン、プシューン、プシューン、プシューン・・・・・・。
ロケット花火、100連発、その他、諸々の花火の一団が、凄まじい弾幕を張って、紙風船の行手を遮ろうとします。

「行け、行けえーい!一気に突破だー!!」
ピュー、ピュー、ピュー、ピュー、ピュー、ピューピュー、ピュー、ピュー・・・・。
プシューン、プシューン、プシューン、プシューン、プシューン、プシューン・・・・。
ピュー、ピュー、ピュー、ピュー、ピュー、ピューピュー、ピュー、ピュー・・・・。
プシューン、プシューン、プシューン、プシューン、プシューン、プシューン・・・・。
「ええい!お前らなんかに、落とされてたまるかー!!」
さすがに、今度の紙風船は、勢いが違います。炎の暴風とも思えた、彼らの花火攻撃ですが、やはり、スピードある飛行物体を撃墜するには、火力が足りなかったようです。紙風船は、彼らの射程圏外へ、アッという間に離れていきました。

大成功です。
「ざまあみろー!思い知ったかー!!」
私は、子どもたちと一緒に、目一杯のガッツポーズで、彼らに仕返しです。
これを見た、ファランのオッサンたちは、いかにも、悔しげな表情を作りながらも、ニッコリ笑い、ライフルで紙風船を打ち落とすような仕草をして、我々に返してきました。
紙風船を飛ばす方も、落とす方も、年に一度のお祭りを、心から楽しんでいました。

「よし、帰ろうか」
私が、子どもたちに声をかけると、
「パパ、お腹すいた」
つい先ほど、お店の裏で、パッタイ(タイ風焼きそば)を買って食べたばかりのきよみが、また、そんなことを言っています。いったい、どれほど食べれば、この子のお腹は満たされるんでしょうか。
「じゃあ、帰りに、ビッグワン(コンビニ)で、何か買っていこうか」
「やったー!」
子どもたちは、ここでも、また歓声を上げていました。

以前は、一家6人で、賑やかに祝った西岡家のローイ・クラトングですが、今では、4人になってしまいました。来年は、なおこも、日本に行ってしまいますから、3人で寂しく、ローイクラトングです。
たとえ、離れ離れになろうとも、いつまでも、いつまでも、紙風船のように、高く舞い上がって、私たち家族の幸せが、ずーっと、ずーっと、続いていきますように・・・。
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by phuketbreakpoint | 2007-12-02 10:21