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タイ・プーケット島在住。タイならではの出来事や日々の体験、個人的な思い出などを書きとめています。


by phuketbreakpoint
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みにくいアヒルの子

「おう、マヨムか。どうだ、元気か」
「あー、パパ、サワッディー。元気、元気、どうしたの今日は?」
11月19日は、長女マヨムの誕生日です。私は、バンコクで大学に通っているマヨムに電話しました。
「誕生日おめでとう。いくつになったんだ?・・・22歳か。どうだ、新しいボーイフレンドは、できたのか?」
付き合っていた韓国人と別れた後、しばらく元気のなかったマヨムですが、新たな恋を探す方法として、フェイス・ブックに目をつけたようです。

しかし、マヨムのプロフィルを読んで呆れました。
「父は日本人で、某日系大企業の社長(いつの間に、私が!?)」
「母は、元ファッションモデル(いつの間に、ラントムが!?)」
「小さいときから、ヨーロッパで育てられ(いつの間に、あの子が!?)、近々、海外留学の予定」
だそうです。名前も、
「サクラ・ニシオカ・・・・?何だい、こりゃあ、自分で考えたのか?」
タイ人が思いつく、なんとなく、聞こえのいい日本名っていうのは、こんなもんなんでしょうか。

フェイス・ブックは、タイの若者たちの間で、爆発的に流行っているようで、先日プーケットに戻ってきたときにも、マヨムは、
「ちょっと、用事・・・」
と、出て行ったのですが、どうも、FBで知り合った男の子とデートしていたようです。しかも、相手は、お向かいのスイート・レストランの元マネージャーの一人息子で(こんなもん、サイト使わなくても、知り合えると思うんですが・・・)、お互いに、デタラメなプロフィルを読み合って、その気になり、会った途端に、全部バレて・・・。
そんなところなんでしょう。

マヨムには、こんな思い出があります。
「パパ、これ読んで」
あの子が小さいとき(幼稚園~小学校1,2年)、マヨムは、よく日本の絵本を読んでほしいと、私に、おねだりしてきました。全部で30冊以上ある絵本の中から、あの子が選んできたのは、「みにくいアヒルの子」でした。

次の日、
「パパ、これ読んで」
もってきたのは、また、「みにくいアヒルの子」です。
「これは、きのう読んだだろう。別のにしたら?」
「これでいいの。これ読んで」
そして、次の日も、
「パパ、これ読んで」
また、「みにくいアヒルの子」でした。
毎日、毎日、同じリクエストで、暫くすると、さすがに飽きたのか、おねだりに来なくなりましたが、忘れた頃になって、また、
「パパ、これ読んで」
再び、「みにくいアヒルの子」でした。あまりに何度も、繰り返していたので、終いには、ラントムも呆れてしまい、
「ちょっと、いい加減にしなさい。たまには、別の本にしなさいよ」
と、注意していましたが、私には、あの子の気持ちが、なんとなくわかりました。

姉として、一緒に暮らしてはいるものの、ラントムの親戚や、知人、周りの人間たちが関心を寄せるのは、いつも決まって、日本人の子である、妹や弟ばかり。
「ルーク・ニップン(日本の子)、ナーラック・ルーイ(かわいいなあ)!」
「やっぱり、白いわねえ。私も、こんな子欲しいわ」
誰が来ても、褒めていくのは、弟と妹だけです。
「どうして、わたしだけ、変なんだろう・・・」
本を読んでもらいながら、みんなからいじめられ、思い悩む主人公に、自分の姿を投影していたのでしょう。そして、物語のラストで、白鳥の子が美しく成長し、みんなを驚かす場面では、大いに溜飲を下げていたに違いありません。
「いつか、私も、きっと綺麗になってやる」
そんなことを、思っていたのでしょうか。

現在22歳のマヨムが、白鳥ほど綺麗になったかどうかは別として、あの子も、いよいよ大学を卒業する年になりました。
あの子は、同じバンコクにいる実の父よりも、プーケットにいる私に、親しみを感じているのか(ありがたい話です)、12月5日の父の日(国王の誕生日)や、私の誕生日には、いつも必ず電話をかけてきて、プレゼントも送ってきてくれます。
この前、送ってくれたのは、映画「ライオンキング」のポートレイトでした。ライオンの子が、お父さんライオンと、じゃれあっている、いかにも、マヨムが選びそうなイラストでしたが、これが、あの子の夢見る理想の父子関係なのかもしれません。
末娘のきよみとは、いつも、じゃれ合っている私ですが、血のつながりのないマヨムとは、どうしても、じゃれ合うことができませんでした。

そんなマヨムが最近、新たに、おねだりをしてきました。
「パパ、アメリカに留学したいの。行ってもいい?」
絵本を読む以外、ほとんど、おねだりしなかったマヨムの願いですから、叶えてやりたい気持ちは、十分にあるのですが、
「いったい、いくらかかるんだ?」
私は、かなり怖気づいていました。
「まず、行く前に、渡航費と授業料で・・・・」
(青ざめる、ラントムと私)
「それに、生活費が最低でも、一ヶ月・・・・・はかかるの・・・」
(ふらついて、後ずさりする、ラントム)
・・・・うーん、タイで家が買えちゃいますね。

しかし、マヨムの場合は、兄のシィンや、弟の、あきおと違って、手をつけた勉強は、ちゃんと最後まで終わらせて、卒業証書も、もらってきますから、
「全部パー」
にはならないでしょう。
金はかかりますが、ずっと、あの子の期待に応えてやれなかった私がしてやれる、せめてものプレゼントだと考えることにしましょう。
by phuketbreakpoint | 2009-11-26 11:26