タイ・プーケット島在住。タイならではの出来事や日々の体験、個人的な思い出などを書きとめています。


by phuketbreakpoint
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ラントムのお父さんは、数年前に脳溢血で倒れ、左半身が不自由になってしまいましたが、元気だった頃は、いろんな方面から声がかかり、結構忙しくしていました。

お父さんは、田舎生まれの田舎育ちで、田んぼと、ゴム林以外は、ほとんど何も知らない人間ですが、だからこそ、プーケットでは、非常に重宝されていたのです。
「パン(お父さんの略称)、ちょっと林に行って、ドリアン採って来てくれないか。半分、あんたにやるから」
「うちの裏庭、草ぼうぼうで大変だ。ちょっと、刈ってくれ」
「葬式で、豚を殺すから(出席者にふるまうため)、やってくれないか」
人殺し以外は何でもやる、便利屋みたいな仕事が多かったのですが、お父さんのように、田舎仕事ができる人は、今のプーケットには、なかなかいません。
人殺しで思い出しましたが、お父さんは、自称マッサージ師を名乗っていますが、若い頃、頼まれて揉んだ相手の男性が突然死してしまったそうです。村の人たちは、
「パンが、変なツボを押したから、死んじゃった」
と噂していたそうですが、遊び人である、お父さんは、その男性の未亡人を、しっかりモノにしてしまったようで、それを聞いた人たちは、
「やっぱり・・・。これが目的だったか」
と、ますます疑惑が深まってしまったそです(お母さん談)。


牛飼いに、ブタの世話、牛殺しに、ブタ殺し、野菜や果物の収穫、鳥打ち、カエル取り、ギボン狩り・・・。
「椰子の実採り」なんて、猿にしかできないと思っていましたが、人間だって、できるんです。椰子の木に、するすると攀じ登って、ココナツの実を下に落とす・・・、見ていると、簡単そうに見えますが、これができる日本人は、まず、いないでしょう。
椰子の木は、実の生っている部分から下は、枝が、まったくありませんから、手で掴んだり、足に引っ掛けて、踏ん張ったりすることができません。
まるで、ぶっとい上り棒のように、腕と足の平、腿の内側の3点で挟み込み、ぐっと腰を入れるように登っていきますが、かなり強靭な肉体を持った人でないと、なかなか上には行けません。私も、チャレンジしたことがありましたが、2メートルも登れませんでした。
ムエタイの選手が首相撲(相手の首の後ろに両手を回し、上体を引き込んで、ひざ蹴りを狙う動き)に、めっぽう強いのは、こういった日常運動で鍛錬されているからでしょう(当然、セックスも強いはず)。
もし、熱帯版「サスケ」、なんて番組があれば、制覇できる日本人は皆無でしょう。

ルクタンの実(砂糖やお酒にしたり、生で食べる果物。寒天のような食感)も、カロン・ビーチに住んでいた頃(1995年)は、よく採りに行っていました。
様々な木種がありますが、カロンに生えているものは、ココナツの木のように細長く、しかも、実が生っている部分は、かなりの高度にありますから、落ちたら、一巻の終わりです。近所に住む仲間とペアを組んで、一本一本、交代で登っていました。
採ってきた実を、ビニールパックに6個ずつ入れて、売っていましたが、公共の土地だろうが、個人所有の土地だろうが、勝手に採っていても、誰からも文句がつきませんでした。危険と収益のバランスが、著しく悪い作業でしたから、
「あんな危険な仕事で、1袋20バーツ?冗談じゃない!」
ライバルは、誰もいませんでしたが、相棒がバイクで事故死して、廃業となりました。

「椰子の実割り」も、田舎では必須の作業です(タイ料理には、ココナッツが欠かせません)。
昔、ジャイアント馬場さんが必殺技として使っていましたが、実際の「椰子の実割り」は、あれとは、似ても似つかないものなのです。
ナタで、グサリと切り込みを入れ、突き刺さった刃の、テコの作用を利用しながら、分厚い外皮と、内皮の間に隙間を作っていきます。それから、両手を使って、
“人間の頭の毛を、毟り取るように”
外皮を剥がし、取り出した中心部分を真っ二つに割って、内部の白い実を、専用の道具を使って、細かく削り取っていきますが、都会で暮らす人は、こんな面倒な作業は、まずやりません。袋入りのものを市場で買うか、市販のココナツミルクをスーパーで購入します。
新婚当時、ラントムが簡単そうにやっていましたから、これもチャレンジしてみましたが、まったく歯が立ちませんでした。

ブタを殺すのも、簡単ではありません。
“大きなハンマーで、頭部を強打して・・・・”
カウボーイが牛を殺すようなスタイルを、私は想像していましたが、タイ人は、そんなやり方はしません。
4人がかりで押さえつけて、動けなくし、ナイフで頚動脈を突き刺します。鮮血が流れ落ち(それをバケツで受けて、凝固させ、食べます)、次第に、ブタは動かなくなって、ご臨終となります。
しかし、こう書いていても分かりますが、かなり凄惨な作業ですから、
「じゃあ、オレがやろう」
という物好きな人は、プーケットでは、なかなか見つかりません(最近は、田舎の方でも少なくなってきたようです)。特にタイ人は、タンブン(徳を積む)に非常に熱心ですから、殺生は、極力避けたいのでしょう。
結局、いつも、お父さんのところに話が回ってくることになります。

ナマズ獲りも、得意でした。
「こんなの、ただのドブでしょう」
日本人から見れば、明らかにそう思える湿地帯でも、タイでは食料の宝庫です。岸辺には、パクブン(空芯采)が群生し、魚類も、たくさん住んでいますから、まったく、お金がない人でも、食べ物にありつくことができます。
浅瀬に壺を埋めておくと、翌朝には、ナマズや、プラチョーン(雷魚)が迷い込んでいるという、単純な漁法ですが、プーケットでは、
「あんな汚い川に入ってまで、獲りたかねえや」
と、お父さんの独占状態でした。

こうして、野良仕事最強王の名を欲しいままにしていたお父さんですが、倒れる数年前あたりから、強力なライバルたちに、その座を脅かされるようになっていました。
年々増加の一途を辿るミヤンマー人労働者が、建設現場の周辺に臨時の集落を作り、お父さんですらやらなかった、「犬さらい」(犬鍋用)や、雑草摘み(食べられるものが何種かあるようです)をやるようになると、   
「奴らには、敵わん」
と、第一線を離れていきました。さすがのお父さんも、近代化の波には逆らえず、とうとう、時代の渦に飲み込まれてしまったようです。
ここ何年かは、廃品回収に精を出して、
「ポー(お父さん)、みっともないから、ソイ中のゴミ箱をあさるの、止めてちょうだい」
ラントムから、怒られながらも、小遣い稼ぎに余念がありません。


数年前、社会科の教科書を使って、なおこに日本語を教えていた頃、
「リサイクルって、ポータウ(おじいちゃん)が、やってるようなこと?」
と、聞かれたことがありました。私は、
「ああ、ポータウは、地球の資源を大切にして、タイの環境を守っているんだよ」
そう教えてやりましたが、どういうわけか、なおこは、その話を、まったく信じていないようでした。
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by phuketbreakpoint | 2010-08-03 00:58