タイ・プーケット島在住。タイならではの出来事や日々の体験、個人的な思い出などを書きとめています。


by phuketbreakpoint
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前回、ガードマンには、当たりが多かったと書きましたが、中には、外れの人も、もちろんいました。
“この人の制服の裏地には、大きく、「スカ」って、書いてあるんじゃないか”
そう思いたくなるような人もいたのです。
今回は、外れも、外れ、大ハズレだった、サワイさんを紹介しましょう。

「今すぐにですか?ちょっと、難しいですねえ・・・。いないこともないんですが、この人は、やめた方が、いいかもしれませんよ。一言じゃあ、うまく言えないんですけど・・・・」
常駐のガードマンさんが田舎に帰ることになり、警備会社に電話したところ、人材が底をついていたようで、いい返事は返ってきません。
残っている警備員は、経験の浅い新人だそうで、会社も、できることなら紹介したくない素振りが覗えました。しかし、猫の手も借りたい、ハイシーズンの真っ最中でしたから、
「どんな人だって、いないよりは、マシじゃないかしら・・・」
「猫よりは、マシだよ、人間なんだから・・・(この判断が、まさか間違っていようとは!)」
ラントムと二人で、そんなことを話しながら、警備会社に無理を言って、連れてきてもらったのが、サワイさんでした。

「サワッディー・カップ」
どんな人が来るのか不安でしたが、40過ぎの、どことなく、気の弱そうな細身の男性が、上司に連れられて現われました。しっかりと、両手を合わせて挨拶してくれましたから、第一印象は悪くありません。
「サワイは、慣れていないせいもあって、怖がりなんですけど、辛抱して、使ってやってください」
彼の上司は、そんなことを言っていましたが、田舎から来たばかりの人は、外国人観光客に対しては、誰しも臆病なものですから、私も気にはなりませんでした。

新しくガードマンさんが来たときには、女房のラントムが、業務の大筋を説明し、必ず、やって欲しいこと、具体的には、
1.物売りを、店頭から追っ払うこと
2.閉店後、戸締りや、電気の消し忘れを、チェックすること
3.深夜に戻ってきた宿泊客に、鍵を渡すこと
等を教えていきます。
あまり一度に、たくさん言っても、覚えきれませんから、初日は、この程度にしておきます。

「じゃあ、頑張って。簡単な仕事だから、英語が解らなくても、問題ないと思うよ」
お店が終わり、戸締りして、ラントムと二人で、隣りのサウスロードの二階に移動して、寛いでいたときです。
“ピンポーン”
チャイムが鳴りました。
「どうした?」
裏のシャッターを開けてみると、サワイさんが立っています。
「車のドア、鍵がかかってません」
なかなか、よく気がつく人だと、好印象を持ったのも、つかの間、
その30分後に、再び、
“ピンポーン”
またしても、ガードマンさんです。
「どうした、今度は?」
「ところで、客室の鍵のことですけど、これは、どうすればいんでしょうか」
(客室の鍵?それは、さっき、ラントムが説明してたような・・・)
そんなことを思いながら、サワイさんに再説明し、私は寝室に戻りました。
解っているのか、いないのか、不安に思いつつも、この夜は、再びチャイムが鳴らされることもなく、初日は無事に終わりました。

こんな調子で、3日ほど経過したあたりから、私も、ラントムも、彼の異常に少しずつ、気づき始めたと思います。
「サワイさん、なんか、オレのタイ語が、ぜんぜん解ってないみたいなんだ。ママ、悪いけど、もう一度教えてあげてよ」
「・・・もしかしたら、言葉の問題じゃないかもしれないわよ。私のタイ語も、なんか通じてないみたいなの。毎日、同じ説明してるのに・・・」

閉店後のピンポーンは、初日以来、毎晩続いていましたが、慣れてきたせいか、時間帯も、だんだん遅くなっていきました。閉店後2時間以上たって、私が熟睡していても、容赦ありません。
“ピンポーン”
「・・・・どうしたの?なんかあったの?」
「さっき、ファランのお客が、なんか言ってましたけど、意味がわかりません」
「それで、そのファランは、どこにいるのよ?」
「部屋に入っちゃいました」
「あのねえ、それなら問題ないんだから、いちいち、チャイム鳴らさないでね。わかったね」

しかし、翌日も、
“ピンポーン”
また、その翌日も、
“ピンポーン”
さらに、その翌日も、
“ピンポーン”
とうとう私も、切れてしまい、
「ちょっと、いい加減にしてくれよ。些細なことで、いちいち起こさないでくれ」
こうやって怒ると、2~3日は静かになるのですが(この間は、ブレイクポイントの屋上に寝泊りするラントムのお父さんを頼っていたようです)、すぐにまた、チャイム攻撃は再開されました。終いには、私も、ノイローゼのような状態になってしまい、ピンポーンと鳴らされても、起きなくて済むように、チャイムのスピーカーを、ガムテープで、ぐるぐる巻きにしてしまいました(こんなことをやってないで、もっと早く、クビにすべきでしたね)。

そして、3週間ほど経った、ある晩のことです。
「大変です。私、今から、逃げますから」
サワイさんが、血相変えて、そんなことを言い始めました。
「逃げるって、働いてもらわないと、困るよ」
「いえ、無理です。私、殺されます」
話を聞けば、別れた奥さんの新しい男が、ここに乗り込んでくるといいます。
「女房の愛人が、乗り込んでくる?普通は、女を取られちゃったんだから、あんたの方が、乗り込む側なんじゃないの?もしも、本当に来たら、オレが話をつけてやるから、とりあえず、今夜は働いてくれ」
すると、サワイさんは、目を、まん丸にして、
「じゃあ、ボクを守ってくれる人を、呼んでください」
なんて言っています。

ガードマンを、ガードするために、人なんか雇えませんから、なんとか宥めて、持ち場に就かせたのですが、
「ママ、なんか心配だから、ちょっと、下に行って見てくるよ」
閉店後30分ほどして、私が、ブレイクポイントの裏口を見に行くと、案の定、もぬけの殻でした。しかも、裏口のドアが閉められた状態で、外から開けられないように、ドアの取っ手に、ロープが巻きつけられています。
「あの野郎、中だな・・・」
ロープを、なんとか外し、ドアを開けて、階段を上っていくと、サワイさんは、3階のベランダで隠れていました。
「何やってるんだよ、こんなところで。あんなふうに、入り口を塞いじゃったら、お客さんが戻ってきても、中に入れないじゃないか。下に降りてくれ。ちゃんと、働くんだ」
かなり強い口調で、私は、彼の目を睨みつけて、そう言いました。
「わかりました。じゃあ、下に行きます」
こうして一旦は、持ち場に戻る(フリをする)サワイさんでしたが、やっぱり、彼の言葉など信用できません。しばらくして、もう一度見に行くと、やっぱり、彼は3階でした。しかも、ドアは、また、ぐるぐる巻きです。
「この野郎、もう許さん。今夜で、クビだー」
 
翌日、警備会社の上司に来てもらい、事情を説明すると、
「やっぱり、ダメでしたか。彼は、どこに回しても、この調子で・・・」
サワイさんは、明らかに腰抜けでしたが、会社の人の話では、ネチっこい性格は、人並み以上だそうで、別れた奥さんの携帯に、嫌がらせ電話を、毎日数十回もかけていました。
「お前と、相手の男は、ただじゃあ、済まないぞ」「絶対に、許さないからな」「オレは、本気だぞ」
あまりにも、しつっこかったので、とうとう相手の男が電話口に出てきてしまい、
「よし、それほど言うなら、今から俺が、そっちに行くから、動くなよ。はっきり、決着つけようじゃないか」
こう逆襲されてしまうと、サワイさんには、男と対峙して、女を取り戻す根性も、勇気もありません。
「あわわわわ・・・、大変だー!あいつ、ここに来ちゃうぞ・・・。どうしよう・・・殺される・・・・。どうしよう・・・、本当に、どうしよう!」
自分から仕掛けておきながら、相手が本気で怒ってきたら、とたんに怖くなって、逃げる準備を始めていたのでした。

ハイシーズンになれば、毎年人手が足りなくなり、ついつい採用の基準が甘くなってしまいますが、ここが辛抱のしどころなのかもしれません。
“この人だったら、いない方が、はるかにマシだ”
数は少ないですが、そう思いたくなった人は、サワイさん以外にも、何人かいました。
タイ人で自営業をやろうと思っている人は、覚悟しておく必要があるでしょう。
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by phuketbreakpoint | 2009-04-19 10:50
ブレイクポイントをオープンして、7年になります。
その間、厨房や、ホールのスタッフでは、ずいぶん苦労しましたが、夜間の警備を任せるガードマンは、どういうわけか、当たりが多かったと思います。
印象深い人、記憶に残る人も多く、今回は、そんな一人、恐怖のジョーこと、アムナートくんを紹介しましょう。

この人が、初めてうちにやって来たときは、無気力発言を連発していました。
「あーあ、つまんねーなー」「前の現場は、よかったなー。ホテルのスタッフ通用門で、事業員の出入りを管理するだけだったから・・・」「ずっと寝てられたし、料理も美味しかったし、ああー、戻りてえなー」
初日から、こんな調子だったので、一週間ほど我慢していた女房のラントムも、ついに爆発してしまいます。
「あんたねえ。そんなに前の現場がよかったなら、明日から、そっちに回してもらいなさいよ。ブラブラして、お金だけもらおうったって、ダメだからね」
このキツイ一言が堪えたのか、翌日からアムナートくんは、別人のように、バリバリと働くようになりました。
頼みもしないのに、テーブルのお皿や、グラスを片付けてくれたり、メニューを見ているお客さんを、呼び込んだり・・・。
「ママ、見た?今日は、ずいぶん、一生懸命働いてるねえ。どうしたんだろう、急に・・」
突然、働き始めたアムナートくんは、他のスタッフとも、すぐに打ち解けていきました。

そんな、ある日です。
「ボス、すいませんけど、来週から、ここには、もう来れません」
アムナートくんは、おじさんの紹介で、ホンダの整備工場の仕事が決まったようで、警備会社を辞めることになったと、閉店後、私に打ち明けてくれました。
「そりゃあ、良かったじゃないか。ホンダなら、給料もいいんだろ?まあ、しっかり、頑張れよ」
私も、ラントムも、他のスタッフたちも、みんなで気持ちよく、彼を送り出してやりました。ところが、何日かして、彼から電話が入ってきます。

「ホンダの仕事は、もう辞めました。やっぱり、ボクには、あういう仕事は無理みたいですね。ところで、ボス、ボクを雇ってもらえませんか。今度は、ウエイター、やりたいんですけど」
ブレイクポイントの正社員として、働き始めたアムナートくんは、いろいろと自分のことや、将来の夢についても話してくれました。
「実は、ボク、政治家になりたいんです」
これまで、何十人とスタッフを見てきましたが、政治家志望というのは、彼が始めてだったと思います。
「立候補したことも、あるんですよ」
彼の実家は、ナコンシータマラートの外れにある、小さな村だそうで、2年前、そこの地区長(何人かの村長さんを統括する役職)選挙に立候補し、大差負けで落選しましたが、政治に対する関心は、並々ならぬものがありました。
「タイの政治は、とても汚い。こんなことをやっていたら、この国は、ダメになってしまいますよ。私は地方から、政治改革の手を挙げようと思っているんです」
タイの政治体制や、選挙制度、その問題点、今後、どういった政治を自分が目指しているのかなど、彼は熱く、語ってくれました。
「キミは、なかなか、志が高いんだね。まあ、立候補することになったら、オレも、微力ながら応援するよ」

そんな会話を交わした数日後、私は、うちの隣りで、レストランをやっているイタリア人と、お店裏の駐車場を巡って、激しく争いました。言い合っているうちに、取っ組み合い寸前の大喧嘩になってしまい、
「終いには、殺されるぞ、あのイタ公・・・」
興奮して、ついうっかり、そんな物騒なことまで口走ってしまいます。
そして、タイミングが悪いことに、それをアムナートくんに、しっかり聞かれてしまい、彼は、「待ってました!」と、ばかりに飛びついてきました。

「そうですよ、ボス。あんな生意気な野郎は、この際だから、やっちゃいましょう(おい!政治家志望なら、こういうときは、止めろよ!)」
私が慌てて、
「いや、さっきのアレは、言葉のアヤだから、忘れてくれ・・」
そう言っても、彼は、やる気満々(?)で、
「ボスは、心配しないでください。こっちで、全部やっときますから(やっとくなー!)」
「こういうときは、思いきりが肝心ですよ(思いきるなー!)」
しかも、翌日、ラントムのお父さんを相手に、お店の裏で、
「成功したら、ボスは、いくらくらい、くれるのかなあ・・・」
等と、皮算用(?)に励んでいたそうです(お父さん談)。これを元手に、また立候補しようと考えていたんでしょうか。
決断→計画→実行→報酬→逃亡→立候補→当選という、ロードマップを頭の中で描いていたのかもしれません(こういう人を、政界に送り出したら、大変です)。

この後、数日間は、私も心配で、
「ジョー(アムナートくんのニックネーム)、オレは、もう怒ってないからなー」
「いや、奴も、ああ見えて、いい所あるんだよ(うそ)」
「やるなよー」
「ホントに、やるなよー」
殺人教唆で捕まったら、大変ですからね。
この人は、南部タイ出身だというのに、妙に色白で、これが酒飲んだり、怒ったりすると、頬が紅潮してきて、話に、どんどん真実味が出てきてしまうのです。それから何週間かして、イタリア人が、お店を畳んで出て行ったときには、正直ほっとしました。

ところが、年の瀬の大晦日の夜、とうとう、アムナートくんは、事件を起こしてしまいます。
毎年、この日は、スタッフパーティーを開くのが恒例になっていますが、宴が、お開きになった後も、ジョーと新しいガードマンは、お店の裏で、お酒を飲んで動きません。
「まだ、飲んでるのか?オレは、もう寝るから、後は勝手にやってくれ」
そう言い残して、私とラントムは、先に寝ました。
ところが、翌朝起きると、ラントムのお父さんがやってきて、私に告げ口します。
「昨晩は、大騒ぎだったんだぞ。ヤーム(ガードマン)が、血だるまで、病院送りだ・・・」

話を聞けば、犯人は、昨夜、一緒に座って楽しくやっていたはずの、アムナートくんだそうで、飲んでいるうちに、付き合っている女のことで大喧嘩になった挙句、仲間を呼んで(タイ人は、どうして自分一人で喧嘩しようとしないんでしょうか)、袋叩きにしてしまったそうです。
元旦の未明から、ガードマン不在で、ブレイクポイントは最悪の仕事始めでしたが、やられた側の警備会社の社長さんは、カンカンで、
「絶対に、許さんぞ。裁判に訴えてやる」
と、いきり立っていました。しばらく、身を潜めていた、アムナートくんでしたが、数日後、元ボスに、恐る恐る電話して詫びを入れ、相手のガードマンにも謝りに行って、なんとか和解しましたが、プーケットから、所払いということになりました。私にも、最後に電話で挨拶してくれました。
「ボス、こんなことになってしまって、すいませんでした。もし、戻ってこれたら、また使ってください」
神妙な口ぶりでしたが、本当に反省してるんでしょうか。

何年かして、パリっとしたスーツに身を包んで、アムナートくんが現れたら、どうしましょう。
「ボス、やりましたー!ついに、当選です。
これから、ボクは、タイの政治を、どんどん変えていきますよー!期待してください」
問題の多いタイの政界ですが、彼の手で変えられるくらいなら、このままの方が、いいのかもしれません。
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by phuketbreakpoint | 2009-04-12 10:20