タイ・プーケット島在住。タイならではの出来事や日々の体験、個人的な思い出などを書きとめています。


by phuketbreakpoint
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30

地獄のスクワット

「ボディービルダーは、見かけは凄いけど、大してパワーはないんだよ」
よく素人のお兄ちゃんが、こんな解説をしているのを耳にしますが、それは、ちょっと違っていると思います。毎日、あれだけ重いものを持ち上げているんですから、パワーがないということは、あり得ません。
ただし、そのパワーを、日常生活の中では、極力使おうとしない習性はあると思います。
「ちょっと、パパ、これ運んでちょうだい。ジムで鍛えてるから、こんなの簡単でしょ」
確かに簡単なんですが、そんな体力や、カロリーがあったら、次回のトレーニングのために、温存しておきたいと考えるのが、はまっている人の特徴でしょう。数あるスポーツの中でも、ウエイトトレーニングほど、実生活の中で、使い物にならないものも、珍しいのではないでしょうか。

特に、一流のビルダーを目指している人たちは、激しく動くのは、トレーニングのときだけで、あとは上質のたんぱく質、各種サプリメント、禁止薬物等を、数時間おきに補給しながら、無駄なカロリーを極力消費しないよう、休養に専念します。
「ガーっとやって、食って、あとは寝ている」
パトンビーチで、ぶらぶらしながら、ヒモ暮らしをしている兄ちゃんたちと、ほとんど変わりません。しかも、ヒモ兄ちゃん達とも違うところは、セックスでも、決して体力を使おうとはしないことです。
「彼に、強く抱きしめられたい」
そんなことを考えても、無駄でしょう。結局、「抱きしめる」役は、あなたに回ってきてしまいます。
彼は、なんだかんだと言いながら、少しずつ体をずらせて、体勢を入れ替え、ガードポジションに移行し(早い話がマグロ状態だ!)、こうなると、もう自分では、何もやる気はありませんから、あとの面倒は全部、あなたがみなければなりません。
なに?よく知ってるじゃないかって?
当たり前ですよ。私も、いつも、やってますから。
ポジションチェンジは、「寝技格闘技」の基本といえるでしょう。


午前8時30分、パトンジム。
「ぜい、ぜい、ハア、ハア・・・・」
(よし、まだ余力は、充分あるぞ!)
前回も、前々回も、そのまた、前の回も、三度連続して、12レップで潰れてしまった、85キロのスクワット(目標は15レップ。当日のコンディションや、栄養補給状態、立ち位置など、微妙な要因が大きく作用します)ですが、今日は、10レップをクリアした時点で、まだ、たっぷりとパワーが残っていますから、新記録達成は間違いなさそうです。
いつもなら、5-6レップの時点で感じる、
「重いッ・・・、これじゃあ、15どころか、12までいくかどうか」
といった重圧も、この日は感じることなく、10レップまで来ましたから、こうなると、新記録への期待が、一気に高まって、ますます、気力が充実してきます。
「よしっ、このまま、一気に記録更新だ!」
目標に向かって驀進中の私は、余裕綽々といったところでした。

ところが、こういうときに限って、どんでん返しが待ち構えているのは、人生の常です。
「おりゃあ!」
気合を込めて発した掛け声でしたが、その気合が災いしたのか、ここで、思わぬアクシデントが勃発です。私が腰を落としきった瞬間、
“ブチっ・・”
糸が勢いよく弾けるような音が聞こえてきました。気合を入れすぎたのが原因だったのか、どうも、穿いているズボンが、少し裂けてしまったようです。ジムでは、厚手の短パンの中は、ブリーフなしで、フリチンというスタイルでしたから、破れた場所や、大きさによっては、モロに、「中身」が見えてしまいます。

(まっ、まずいことになったぞ・・・)
普通なら、この時点で、すぐに中止して、帰宅し、また、出直してくればいいと思うはずですが、はまっている人の場合は、そういうわけにはいきません。
既に、11レップをこなし、体力も相当使っていますから、ここで止めてしまった場合、たとえ、休憩時間をたっぷりと取ったとしても、この日のうちの、記録更新は不可能になるでしょう。今日のコンディションは、絶好でしたから、諦めようという気には、どうしてもなれませんでした。

(なあに、少しくらい破れても、誰も、気が付きはしないだろう)
そうタカを括った私は、思い切って、12度目のレップに入りますが、「あと、4レップだ!」、と気合を入れ直したのが拙かったのか、下の方から・・・・・、
“ブチブチっ・・”
前回以上に大きく、長い異音が耳に入ってきました。
(うぬうぬっ・・・・さっきより、いっぱい破れちゃったみたいだ・・・、3センチ、いや、5センチ、それとも、もっとか?)
焦りまくった私でしたが、レップスは、12回目を難なくクリアし、目標だった、15回が目前に見えてきます。

(ええい、このまま、強行突破だ!)
再び、膝を折っていき、13レップ目に入ります。
しかし、膝が、その角度をゼロにした瞬間、また、あの忌まわしい破裂音が辺りに響き渡ります。
“ブチブチブブチブチっ・・”
(うぬうぬうぬ・・・・、今度のは、相当デカイぞ・・・。ほとんど、見えちゃってるんじゃないか・・・)
この音に、ビックリしたように、膝は、いつも以上のパワーを発揮して、すぐに、スタートポジションまで戻すことができたのですが、股間が、やけにヒンヤリしてきたのが、自分でも、はっきりとわかります。
ノーパンで、スカート穿いてる女の子は、こんな気分なんでしょうか。

あと、2レップ・・・・、目標達成間違いなしですが、この辺が、やはり限界かもしれません。白いお尻が、ベロンと剥き出しになってしまったら、家まで、どうやって帰ればいいんでしょう。
(止めよう・・・。残念だが、今日は、ここまでだ)
そう言ってる自分は、確かにいたのですが、今日のベストコンディションを、みすみす捨ててしまうのは、余りにも、もったいない!

こうなったら、ヤケクソです。
「もう、なるようになれ!」
私は、再度、膝を曲げていき、その角度が、ゼロに近づいたときでした。
“ブチブチブチブチブチチいっ・・・”
(うぬうぬうぬうぬうぬぬぬぬぬぬ・・・・。まただあああああ・・・・、こりゃあ、ただじゃあ、すまんぞ)
スースーしていた股間でしたが、もう完全に露出状態なのか、ヒンヤリを通り越して、破れたパンツの布と布が、ゴワゴワとぶつかっている感触が伝わってきます。
じっくりとタイミングを計って、息を整えながら続ければ、15回どころか、17、18回くらいは、できそうな雰囲気でしたが、もはや、そんな猶予はないでしょう。

あと1回、とっとと、このセットを終わらせて、すぐに退散せねばなりません。
私は、心を無にして、ひたすら、レップに集中しました。
再び膝を深く折って、十分に腰を落とし、お尻で、思いっきり踏ん張るように力を込めましたが、もう圧力もかからないほど、大きく破れてしまったのか、今度は、パンツからの異音は、聞こえてきませんでした。
「ぜいぜい、ハアハア・・・・・・・・、じゅ・・・ご・・・かい・・・・・・」
とうとう目標を達成した私は、バーベルをラックに戻しました。

すぐに、ズボンの状態を確認したかったのですが、それよりも、周りの目が気になります。
幸い、私の見た感じでは、気が付いている人は、いなかったようで(もしかしたら、気を使って、目を逸らしてくれたんでしょうか)、少し、ホッとしました。
化粧回しを後ろから付けるように、タオルをパンツからぶら下げ、私は、何事もなかったかのようにジムを離れ、家路を急ぎました。

家に帰ってくると、すぐに検証です。
哀れ、バックリと、20センチ以上は裂けていた私のズボンでしたが、立った状態なら、チラチラと肌が見え隠れする程度で、それほどのことはないようにも思えました。
「よし、これなら、そんなに、みっともないことには、なってないぞ」
私は、少し元気が出てきましたが、すぐに、あのときの光景が頭に蘇ってきました。立ったままなら、確かにそうかもしれませんが、フクラハギと、腿の裏側がべったり、くっ付くほど深く、しゃがみこんでしまえば、ただでは済まないのではないでしょうか。心配になってきた私は、ビリビリに裂けたズボンを、もう一度穿き直し、実験してみることにしました。

「そうそう、こうやって、深く膝を曲げて・・・」
ウンコ座りするような格好の私は、頭を大きく前方に傾け、恐る恐る、股間に目を落とします。
さて、どうなっているんでしょうか!?
「・・・・・・・・・・・・」
パッコーン、
ベロンチョー、
チャエー!!
しばらくは、ジムに顔を出さないほうがいいでしょう。
[PR]
by phuketbreakpoint | 2008-06-15 11:37