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タイ・プーケット島在住。タイならではの出来事や日々の体験、個人的な思い出などを書きとめています。


by phuketbreakpoint
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アレヨ、アレヨと三代目襲名

プーケット日本人補習授業校は、1999年の9月にスタートし、今年で7周年を迎えますが、私は、この度、恥ずかしながら三代目校長に就任することになってしまいました。
これには、特別な理由は何もなく、古くからいるメンバーの中で、比較的身動きがとれる、というだけの指名でしたが、それでも、就任したからには、ようやく軌道に乗ってきた補習校が、これからも、ずっと続けていけるよう、後任の方にバトンタッチできるまで、頑張っていこうと思っています。
しかし、小さいとはいえ、曲がりなりにも校長と呼ばれる以上、その品位を、汚すことがあってはいけません。それを考えると、身が引き締まる思いがしますが、幸いにも、前任者の松本さん(仮名)が、校長になる前は、汚しっ放しの生活でしたから、私も、ちょっと安心しているわけです。
そう、過去のことは忘れましょう。大切なのは、今ですね。

2003年4月東京、
「西岡さんには、いつもお世話になっていますから、今日は、私が接待させてもらいます」
半年振りに再会したよっちゃんが、そんなことを言ってきました。よっちゃん、というのは、わたしの20年来の親友の弟さんで、親友が結婚してからは、私は、自由がきく独身のよっちゃんと、付き合うようになっていました。しかし、お世話といっても、私は、彼がプーケットに遊びに来たときに、何回か一緒に飲みに行った程度で、特別に何をやったわけでもありませんが、「接待したい」と言っているのを、断る理由もありません。
「プーケットじゃ、オレばっかり、いい思いしてますから、今日は西岡さんに、思いっきり、羽根を伸ばしてもらいましょう」
思いっきり、羽を伸ばす・・・・? よっちゃんの、さり気ない一言で、私の胸は、大きく高鳴ってきました。

「西岡さんも、たまには、イカガワ系のお店で楽しんで下さいよ」
「イカガワ系・・・?」
それって、やっぱり、アレなんでしょうか。
「いや、私には、妻と子供がありますから、そんなお店に、行くわけにはいきません」
プーケットでなら、はっきりと、そう言ったであろう(たぶん?)私も、今日は東京の空の下で、1人の身です。そういえば、結婚するときも、ラントムには確か、こう言ったはずです。
「オレは、絶対に浮気しない。絶対に、プーケットでは、浮気はしない」
つうことはですよ、東京なら、あの約束を破ることにはならんわけですよ(男はたいがい、こういう動物です)。私は、よっちゃんに、「全部まかせるよ」と言って、彼の車に乗り込みました。

やってきたのは吉祥寺です。
車を降り、彼の案内で薄暗い路地の中に入っていくと、そこには、目映いばかりのチカチカネオンに照らしだされた、見るからに、そういったムード満載のお店が佇んでいました。しかし、恥ずかしい話ですが、ここがあまりにも、そのものズバリの雰囲気だったので、私は、次第にビビリ始め、足早に先を行く、よっちゃんを、慌てて呼び止めます。
「よっちゃん、ちょっと待って。オレ、なんか緊張してきちゃったよ」
「本当ですか? 西岡さんでも、緊張することなんかあるんですか」
とにかく、こんなにカチンカチンじゃあ、下半身がカチンカチンになりそうもない、というので、私は、よっちゃんを引きずるように、路地の入り口まで戻り、そこにあったファミリーマートに飛び込みました。
「さけっ、酒ちょうだい・・・。ウイスキー? うん、それちょうだい」
私は、ジャックダニエルのミニボトルを一本買うや、それを一気に、半分近く胃袋に流し込みました。
「どうしたんですか。西岡さんも、意外とウブなんですねぇ」
よっちゃんが言うとおり、実は、私は日本で、女がいるお店には、ほとんど行ったことがありませんでした。

ファミリーマートの店頭のゴミ箱の上に、ウイスキーのボトルを置いて、よっちゃんと10分ほど深呼吸しながら話していたら(いい大人が、こんなところで一体何やってるんでしょう)、ちょっと落ち着いてきました。
「どうですか、西岡さん、そろそろ、大丈夫ですか?」
車酔いした子供をあやすように、よっちゃんは聞いてきましたが、ウイスキーが、ちょっと回ってきたのか、私も、だんだん、エロモードになってきました。なんだか、闘志が湧いてきましたよ。
私は、両手の平で、顔面をパンパンと2、3度強く叩き(よく相撲取りがやるやつです)、よっちゃんの目に、ギラっとした視線を投げかけるや、
「よっしゃー、じゃあ、行こう!」
と、高らかにゴー・サインを出しました。優勝決定戦に挑む、初代貴乃花のような心境で、私とよっちゃんは、再び花道・・・じゃなかった、路地の中に突っ込んでいきました。

いよいよ、チカチカネオンの看板の真下です。階段を上っていくと、ボーイさんが、ニギニギしく迎えてくれました。
「らっしゃいませーっ、御指名は?」
どう答えていいか分からず、口ごもっていると、よっちゃんが横から、「写真で選ぶから」と答えてくれました。入り口脇のボードには、女の子の写真がベタベタと張ってあり、その中から1人選ぶシステムのようです。しかし、キンキラキンの頭で、ケバケバ顔の写真がズラッと並んでいて、一体、どの娘を選んでいいのやら、と思っていたら、お店の中からスクールユニフォームを身にまとった小柄な女の子が、お客さんを見送りに、入り口まで出てきました。
「この子、けっこう可愛くない?」
私は、隣のよっちゃんに、そう声を掛けましたが、彼は一言、「そうですね」とだけ答えました。「そんなもん、自分で判断しろ」と言いたかったのでしょう。

「あの・・・、今の子が、いいんですけど」
私がそう言うとボーイさんは、
「36番、みらいさんですね。大丈夫です。すぐ入れます。さあ、中にどうぞ」
よっちゃんは、写真の中から、このお店のナンバー2の女の子を、30分待ちで指名したようです。待合室に、よっちゃんを残して、私は、さっそくお店の奥のシートに通されました。このとき、付き添いのよっちゃんと別れてしまい、実に心細い思いがしたのを覚えています。初めて幼稚園に連れていかれた子供が、お母さんと離され、先生に手を引かれて部屋の中に入っていくときの心境だったかもしれません。

ドキドキドキドキドキドキドキドキ・・・・・・・・。
ウイスキーのおかげで、ちょっと落ち着いたとはいえ、ずっと鳴り続けている心臓の鼓動が、いっそう激しさを増してきました。しばらくすると、さっきの女の子が、私のシートにやってきます。
「こんにちはー、初めまして」
彼女は、いきなり私に密着して座ってきました。こういうお店ですから、当たり前なんですが、私は、更に緊張してしまいます。バングラーで、タイ人の女の子に密着されても、何ともありませんが、この日は、相手が日本人だと思うだけでドキドキしてしまいました(お前は、タイ人か!)。しかし、考えてみれば、日本人の女の子と、こんなに密着したのは、十数年ぶりなんですから、それも仕方ありません。古巣の川に帰ってきた、サケの気持ちがよくわかりました。

私は、ガチガチで何を喋っていいのかわかりません。
「えーと、名前は・・・、名前は、なんていうんですか?」
こんなところで敬語使っちゃってます。これじゃあ、初めて女の子と口をきく、中学生とかわりありません。
「みらいです」
彼女がそう答えると、私は、また次のセリフを考えねばなりませんでした。
「えーと・・・、年は、いくつなんですか?」
アホか、お前は!見合いやってるわけじゃないだろうと、もう1人の私が、すかさず、ツッコミを入れてきますが、どうすることもできません。そして、私は、彼女の次の一言で、トドメを刺されてしまいます。

「ジューキュー」
彼女はバッサリと、私をブッタ切るように、そう答えました。先ほど入り口でチラッと見かけたとき、この娘がかなり若いということは分かっていましたが、それにしても19です。
「ジュっ、ジューキュー? ジューキューって、やっぱり、19のことか? えーと、ちょっと待てよ、19っちゅうことは、19年前に生まれたんだから、オレは、そのとき何歳だったんだ・・・。いや、19は、3じゃあ割り切れないんだから、1余って、答えは・・・・」
彼女の、たったの一言が、私の脳内を完全に破壊しつくしてしまったようです。

あまりの興奮で、意識が半分飛んでしまった私は、もう、わけがわからなくなっていたのですが、彼女は、「こんなオヤジ、とっとと片付けてしまいましょ」とばかり、おもむろに「仕事」にとりかかってきました。
彼女は、アレヨ、アレヨという間に、私の唇を奪い、アレヨ、アレヨという間に、着ている服を、すべて脱ぎ捨ててしまいます。
「ちょ、ちょ、ちょっと、まっ・・・・」
私が言い終わらぬうちに、彼女は、「仕上げ」に入るのでした。有無を言わさぬ、彼女の流れ作業に、私は、もう、波間に漂う小船のように翻弄され、なすがままになってしまいます。
「アららら・・・・・」、こんなことも・・・・。
「ホろろろ・・・・・」、あんなことも・・・・。
「ヘレれれれ・・・・・」、そんなことまでやっちゃって、いいんですか?
そして、私は、アレヨ、アレヨという間もなく、あっけなく終わってしまいました。いや、終わらされてしまいました、無理やり。ご対面から計っても、5、6分くらいだったと思います。
「一丁あがり!」
アッサリと仕事が終わり、彼女はきっと、心の中で舌を出し、両手をパタパタと叩いていたのではないでしょうか。

悪いことをしてしまいました。
「正味3分ほど」だったとはいえ、「過ち」を犯してしまった私は、深く反省し、30分後に、遅れて出てきたよっちゃんと、近くの居酒屋に入って、笑顔いっぱいの反省会をやりました。
しかし、これからは、こんなことは、2度とあってはいけませんね。プーケットで暮らす邦人の大切なお子さんたちを預かる身となるわけですから、清く、正しい校長先生でなければいけません。
自重自戒、私は、この言葉を噛み締めるように、任務を遂行していこうと思っています。
過ちは、けっして繰り返しません・・・・・、プーケットでは!
by phuketbreakpoint | 2006-06-26 11:04