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タイ・プーケット島在住。タイならではの出来事や日々の体験、個人的な思い出などを書きとめています。


by phuketbreakpoint
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ど真ん中直球勝負だ

1984年8月、ハンブルグ駅の構内で時間待ちしていた私に、初老の白人紳士が声をかけてきました。
「これから どこに行くつもりなの?」
「夜行で、コペンハーゲンに行こうと思っています」
ごくありふれた会話を交わしているうちに、次第に話は旅から離れ、私自身のことに変わっていきました。
「キミは、なかなか、いい体してるじゃないか」
「はあ・・・・、ありがとうございます」
「本当にキミは素晴らしいよ。よかったら、うちに来ないかい?うちには部屋はいっぱいあるから、何泊だって泊めてあげるよ。もちろん食事付きだ。お小遣いもあげようじゃないか。とにかく、キミは素晴らしいよ。本当に素晴らしい!」
あまりにも、うまい話でしたから、私は、やんわりと断りましたが、この人が悪い人には見えなかったこともあり、ちょっと心が動いたのも事実です。
でも、誘いに乗らなかったのは、正解だったようですね。その後、コペンハーゲンで出会った日本人の男性旅行者は、まったく同じような話を、私に聞かせてくれました。そして、この人は、一緒についていってしまったそうです。

彼の話では、白人紳士の言葉に嘘はなく、本当に至れり尽くせりの歓待を受けていたのですが、何泊か泊まったある夜のこと、彼が酔っ払って寝ていたら、
「なんか、乳首の辺りがチロチロしてるなあ、と思っているうちに・・・・」
・・・彼は、慌てて振りほどき、逃げ出したそうですが、さんざん世話になってるんですから、多少のことは、我慢してあげなくっちゃ、可愛そうですね。
それでも、私は、あの初老男性のことは、今でも悪く思ってはいません。だって、この人は、私のことを、「素晴らしい!」と、何度も絶賛してくれたのです。当時、私は22歳、それまでの人生で、いや、それ以降にも、私のことを、そんなに褒めちぎってくれた人は、この人以外には、1人としていませんでしたから。

プーケットには、わかっているだけでも、子供を含めて300名以上の日本人が暮らしています。若い世代では女性が、年長者、リタイア組は男性が多く、女性たちの多くが、タイ人の男性と結婚し、子供を作って育てています。
日本で、こういう話を聞くと、遊び好きの女の子が、イケメンのロコに引っかかって、貢がされている、といった話と同列に考える人もいると思いますが、プーケットの場合は、かなり事情が違っていると思います。もっと世知辛く、所帯じみた話がほとんで、遊び感覚の人はあまりいません。
相手のタイ人男性は、一部例外もいますが、容姿は極めて平凡な、どっから見ても、ただのオッサンにしか見えない人が多いのです。ルックスのいい男性は、「女の方から、アプローチしてくるだろう(注、タイの女性は極めて積極的です)」といった頭があるようで、自ら積極的には動きませんから、こういう結果になるのでしょうか。

プーケットで暮らす日本人女性の多くが、経済的には、あまり恵まれているとは言えず、ホテルやツアー会社等で働きながら、一生懸命生計を立てています。こんな所で苦労を背負い込まなくても、日本でいくらでも幸せに暮らせるだろうに、とも思いますが、それは裏を返せば、彼女たちの求めるものが、日本にはない、ということなのでしょう。
プーケットはビーチリゾートですから、否応なしに、ロマンティックなムードが盛り上がってしまうのは当然ですが、日本の女性たちに、そう思わせる何かが、この島には、存在しているということです。

「キレイですね」
こう面と向かって言われたことのある女性は、果たして日本に何人いるのでしょう。自他共に認めるような美人でも、せいぜい、「可愛い」と言われる程度ではないでしょうか。
やはり、「綺麗」とか、「美しい」といった表現は、「愛してる」と同じで、あまりにも、言葉の響きがヘビーですから、言っている側も、聞いている人も、現実的にイメージすることができません。存在するが、使用することはできない、まるで核兵器のようなものだとも言えます。

ところが、これがタイの男の手にかかると、突然、魔法でもかけたように、リーズナブルな言葉に大変身し、まるで、ヨドバシカメラの店員さんのように、ポンポンと威勢良く、ごく自然にさり気なく、しかも、ちゃんと意味、内容のある言葉として、命が与えられてしまいます。まるで、花火を打ち上げるように、簡単に核を使用してしまうタイ人男性を見ると、
「キミ、それはルール違反じゃないか」
と意見したくなりますが、これでは核を知らない日本人女性は、ひとたまりもありません。

初球、まさかの、ど真ん中直球で、2球目も、まったく同じコースにストレート。
「まさか、3球目も、同じでは・・・」
と思っていたら、やっぱりそうで、ビックリしているうちに三球三振だ!今や日本で、そんな配給をする男性は、皆無ですから、これでは勝負になりません。タイの男性は、変化球なんか見向きもしないで、ストレート一本で押しまくります。

ともすれば、白々しく聞こえる彼らのセリフですが、それが全然、そんなふうに感じられないのは、やはり、相手を憧れる素直な感情が、そこにあるからなのでしょう。タイ王国での日本女性の人気は、群を抜いており、我々の想像を遙かに超えるものがあります。
「日本の女性と結婚したい」
と願望する男性が多く、中には、まるで芸能人と接するかのような態度の人もいますから、彼女たちの心が傾いてしまうのも仕方ありません。多少の胡散臭さはあるとしても、
「日本人女性最高!アナタも最高!」
というタイ人男性と、日本人男性を比較した場合、これは誰が考えたって、タイ人男性に靡いてしまうでしょう。

私も、女房のラントムには、コロッとやられてしまいました。付き合い始めた頃、「あなたが本気で気に入ってるのよ」的な、分かりやすい彼女の態度が、とても新鮮に感じられたのです。言葉がうまく通じないのは、恋愛の中で、大きなハンデになると思われがちですが、そのハンデがあるからこそ、表現が直線的で、分かりやすくなるのかも知れません。私自身、プロポーズの言葉なんて、言わなかったと思いますが、付き合い始めてすぐに、
「ラントムを日本に連れてってやるぞー」
とぶちまけ、彼女も、
「日本?行く、行く、行く・・・」
とすぐさま応じ、ムードも何もありませんでしたが、そんな分かりやすい彼女が、私には無性に、いとおしく感じられたものです。

片や、日本に目を向けると、みんな恋愛に関しては、消極的な人が多いですね。失敗しないようにと、じっくり相手の気持ちを見極めてから、慎重に事を運ぼうとするようです。カミカゼや、ハラキリの国のはずなのに、当って砕けろ、の潔さが微塵もありません。うちで働いている、オカマのテンちゃんの爪の垢でも飲ましてやりたいものです。彼女なんか、もう砕けっぱなしで、毎月のように、男に捨てられては、落ち込んでいますが、すぐに立ち上がって、再び勝負にいきます。すごい根性ですね。タイ人は、男も女も、年齢なんか関係なく、積極果敢で、「へこたれる」という言葉を知りません
「この人と一緒になって、幸せになれるのかしら・・・・」
タイ人は、そんな無駄なことは考えませんね。こんなもん、いくら考えたところで結論が出るわけでもなし、そんなことを考えているヒマがあれば、とっとと、橋を渡ってしまえ、というわけです。しかし、渡っちゃった後に、「しまったー、やっぱりダメだったかー」
と、すぐに諦めて、戻ってきてしまう人も多いのですが・・・・。

日本人の慎重さ、これは恋愛だけの話ではありません。
ちょっと前に、ライブドアがプロ野球参入を拒否されたときもそうでした。ちゃんと、やっていける会社かどうか、審査する必要があるんだそうです。70年前、正力松太郎さんが巨人軍を作って、プロ野球を始めたとき、ちゃんと、やっていける自信があったんでしょうか?出たとこ勝負だったんじゃないですか?
終戦直後のあの時代で、12球団できたのに、21世紀の今になって、その数が減りつつあるというのは、どう考えても、おかしな話だと思います。ちゃんと、やっていけなくったって、どうってことないじゃないですか。
実力のある選手なら、黙ってたって他のチームが誘いにきます。そうじゃない人は、淘汰されていくわけですが、それは、厳しいプロの世界なんですから、当たり前でしょう。
考えてもどうしようもないことを、グジグジと考えているうちに、時間ばかりが流れていってしまう。それが今の日本の姿なのかもしれません。とにかくみなさん、気楽にいきましょうよ。

 - 後は野となれ、山となれ -
日本では、ダメなパターンの典型として使われる言葉ですが、時には、こういった開き直りの精神も、心のどこかに、置いておく必要も、あるんじゃないかな、と思うこの頃です。
by phuketbreakpoint | 2006-06-14 12:15