タイ・プーケット島在住。タイならではの出来事や日々の体験、個人的な思い出などを書きとめています。


by phuketbreakpoint
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31

子育ては、ベートーベンの調べ

「いい加減にしなさい。こんな調子じゃあ、学校に行くだけ無駄だから、中退して働いたら?」
女房のラントムが、なんだか、不機嫌な様子で電話を切ったので聞いてみると、
「また、シィン(バンコク在住、あきおの異父兄)よ。お金送ってだって・・」
妹のマヨムが、涙ぐましい倹約生活を送りながら大学に通っている一方で、お兄ちゃんである、シィンの、「おねだり電話」は、このところ、どんどん回数が増えているようです。

2ヶ月ほど前にも、こんな「事件」がありました。
真夜中に、ラントムが泣きしながらお祈りしているので、びっくりして目を覚ましたら、原因は、やっぱり、シィンからの電話です。

「メー(母さん)、大変だー!オレ、殺されるかも・・・」
物騒な前置きで始まったシィンの話は、こんな感じでした。
・友達2人と近所の食堂にいたら、ウーテン・タワーイ高校(バンコクで高校生の乱闘事件、殺人事件といえば、まず、この高校だそうです)の連中と喧嘩になった。
・相手は仲間を何人も集めて、しかも、凶器を使って襲い掛かってきた。
・自分は顔面他、数箇所を刺され、友達に至っては、手が、ちょん切れてしまった
・すぐに病院に連れていきたいが、連中は、まだ辺りをウロチョロしているから、隠れている場所から、出るに出られない。
・もうしばらく、身を潜めて、明朝一番で病院に行くから、お金を送ってほしい。
・お願い、母さん!

そういうことでしたから、私が翌朝、きよみを学校に送り届けた後、その足で銀行に直行し、8時30分の開行を待って、5000バーツ送金しました。
ところが、約1月後、プーケットに遊びにきた、シィンの顔を見ましたが、傷跡など、どこにもなく、
「傷?ああ、あれね。治った」
と一言です。
あの大騒ぎは、いったい、なんだったんでしょうか(きっと、手がちょん切れてしまったはずの友達も、かすり傷だったのでしょう)。

クリスマスの日も、そうでした。
クリスチャンの彼女にとって、この日は、1年で最も神聖な日だというのに、朝っぱらから電話がかかってきます。
「メー(母さん)、大変だー!今日、学校の試験なのに、お金がない(受験料だけでなく、交通費までない)。すぐに送って!」
一応、学業に関わることなので送金しましたが、彼女は、カンカンでした。

そして、今回の電話です。
「ピーマイ(お正月)だから、アンパオ(お年玉)ちょうだい」
ときましたから、とうとう、ラントムも切れてしまいました。
「父さん(実父)から、もらったら。母さん、忙しいから、もう切るわよ」
呆れ返ったラントムが、そう突き放すと、
「お願い!今回だけ!この願いだけは、聞いてちょうだい!」
と選挙戦最終日の候補者のようなことを言っています。
これで、何回目の、「最後のお願い」なんでしょうか。


いっぺんに憂鬱になってしまったラントムでしたが、一通の封筒が日本から届き、とたんに、気分は晴れやかに変わります。
「ママ。なおこの学校から、手紙が来てるよ。2学期の期末試験の成績順位表だ。ふむふむ・・・まず、現国が・・・・、98ポイント、1位!英語Ⅱ、74ポイント、5位!情報A、97ポイント、1位!特進コースで、なかなか、大したもんだねえ」
入学当時、29人中、29位(因みに、あきおは28位)だったのに、本当に、よく頑張ったものです。
「パパ、ホントなの?なおこは努力家だから、きっと、いつかは、やってくれると信じていたわ」
ラントムも、目に薄っすらと涙を溜めながら、このニュースに聞き入っていました。

ところが、ラントムと2人で、なおこの快挙にジーンときているところに、(ラントムの)お父さんがやってきて、こんな告げ口です。
「あきおが、裏で、ビール飲んでたぞ」
そんな話は、聞きたくもありませんでしたが、そう言われてしまうと、注意しないわけにもいきません。
「あきお、お前ねえ・・・・」
と、やりたくもない説教をして、ドーンと、気分は最低になってしまいました。
我が家は、いつも、そうなんですが、
「明るいニュースは、娘たちから」
そして、
「暗いニュースは、息子たちから」
呆れるくらい、この方程式には狂いがありません。

「パパ、なおこ、頑張るよ。パパとママのためにも、頑張るよ」
ジーン・・・・。
「お母さんですか。あきお君が、また学校で・・・・・」
ドーン・・・・。
「私(マヨム)が就職したら、パパとママを、海外旅行に招待するから・・・」
ジーン・・・・。
「メー(お母さん)、コータン・ノーイ(お金、頂戴)。
学校?来月から、ちゃんと行くよ」
ドーン・・・・。

娘たちからの明るい便りに、ジーンときて、その感動も覚めやらぬうちに、息子たちからの暗い知らせで、ドーンと奈落の底へ・・・・。
ジーンときたと思ったら、ドーン。また、ジーンときたら、ドーン。
ジーンから、ドーン、ドーンから、ジーン、「暗」から、「明」、「明」から、「暗」へと変調の連続は、
苦悩を突き抜け、歓喜へと至る、まるで、ベートーベンや、ブラームスの交響曲を聴いているような気分になってくるわけです(子育ては、かるーく、ポップに行きたいですよねえ)。

でも、世の中は、うまく帳尻が合っているのかもしれません。
息子たちの件で、どんどん、失っていくエネルギーを、娘たちからの、「明るい話題」で埋め合わせ、
「明日も、父ちゃんは、頑張るぞー!」
と英気を養うことができるわけです。
うちの場合、娘3人に息子2人ですから、辛うじて、いいニュースの数が上回っていますが、男ばっかり3人兄弟とかだったら、いったい、どうなってしまうのでしょうか。考えただけでも、空恐ろしい話です。

有名な、ベートーベンの交響曲・第5番なんですが、何度か変調を繰り返した後のラストは、なんとなく、暗い終わり方をしています。

「運命」とは、そんなものなのかもしれませんが、実に不吉です・・・。
[PR]
by phuketbreakpoint | 2010-01-07 10:43